Copyright ©2004
Kuramochi Ladies Clinic
All rights reserved.
無痛分娩のご案内
*無痛分娩・妊婦さんの実体験コメント
無痛分娩の概要(大まかな考え)

(1) 無痛分娩=硬膜外麻酔
 当院での無痛分娩は硬膜外麻酔を主体に行うものです。この方法は現在多々ある無痛分娩の手法の中で欧米諸国の麻酔科学教科書、専門医学書を含め唯一、もっとも安全、確実、かつ赤ちゃんに対し影響がほとんどない、と認められています。硬膜外麻酔自体は帝王切開手術等開腹手術(おなかを切って行う手術)に応用されてからすでに30年近い歴史と実績があり、手術中の体に対する悪い影響(侵襲といいます)を最小限に抑える優れた麻酔法としても確固たる地位を確立しています。硬膜外麻酔に加え、補助的麻酔として仙骨神経麻酔、陰部神経麻酔を必要に応じ随時使用します。

(2) 無痛分娩は無痛?ではありません。あえて約1/3ぐらいの痛み具合にしています。
 無痛分娩は上に述べたように手術中の麻酔である硬膜外麻酔を半ば流用したことで成り立っています。もちろん手術中の硬膜外麻酔は完全無痛に非常に近い状態にできます。では無痛分娩も無痛?にはわざとしないようにしています。硬膜外麻酔をかけると大雑把に言うと通常脊髄の知覚神経、運動神経が遮断されます。わずかづつその範囲は異なりますが、知覚神経により陣痛の痛みが抑えられ、その陣痛は運動神経を伝わって生じています。 すなわち硬膜外麻酔が完全に作用すると陣痛の痛みが取れ、しかも陣痛は消失します。これでは分娩が進みません。そこで硬膜外麻酔の特徴の一つである調節能力を最大限活用します。投与する薬剤の種類、分量、濃さ、タイミング、硬膜外麻酔の管を入れる場所を調整することで「痛みがそこそこ取れ、分娩がそこそこ進む」状態にもってゆくことが涵養です。そこそこの痛み・・・は人により異なりますが当院ではおおよそ程度として約1/3ぐらいになるよう調節しています。

(3) 無痛分娩には必要に応じ陣痛促進剤の使用、吸引分娩等を活用します。ただし必要のない処置は極力しません。自然の陣痛を待ってから無痛分娩を行うのが第一です。
 上で述べたように硬膜外麻酔による無痛分娩は分娩にとって一種の「ブレーキ」として作用します。ではブレーキが利きすぎた場合はどうするのでしょう。待って自然に陣痛が回復するのも一つの手ではありますが積極的に「アクセル」を使うことも可能です。陣痛促進剤の使用、吸引分娩がこれに当たります。陣痛促進剤はきちんとした使用法を守れば大変有効な作用が期待でき、硬膜外麻酔で弱くなった陣痛を元通り回復させることができます。硬膜外麻酔でいきみ感が減った場合でも吸引分娩を併用することにより上手な出産の手助けとすることができます。

(4) 無痛分娩は途中から始めても、あるいは気が変わって途中でやめることも自由です。
 硬膜外麻酔は薬の注入をごくごく細く、やわらかい管を通して適時行います。作用している時間も通常1時間程度のため麻酔の開始、追加、中止、再開といった調節をすることが簡単にできます。ご自身の痛みに応じたきめの細かいお手伝いを行っています。

(5) 硬膜外麻酔によって起こりうる影響=薬剤そのものによる赤ちゃんへの直接的影響はありません。
 硬膜外麻酔の性質上、お母さんの血圧が万一低下し、一過性に赤ちゃんへストレスがかかることもあります。しかし胎児の健康状態に大きく影響することはありません。無痛分娩法には一種の麻薬や吸入麻酔を用いる手法がありますが、これらはすべて胎児に対する直接的影響が生じます。原則として局所麻酔剤のみを使用する当院の無痛分娩法はもっとも安全で胎児に対し影響を与えません。ただし、無痛分娩にかかわり無く赤ちゃんの健康状態が悪くなったときは帝王切開術など、もっとも適切と思われる処置を行います。一過性ですがトイレ歩行等に制限の生じる場合があります。硬膜外麻酔後一過性に腰痛、頭痛、知覚異常をきたすことがあります。

無痛分娩教室、開始スケジュール(参照:始めるきっかけ表)
 無痛分娩を実際にお受けになる際の特別な準備、教育、行動制限等は原則として何もありません。無痛分娩のより良い理解のためくらもちクリニックでは「無痛分娩教室」を開催しています。(詳細は別記;短時間なら個別対応も可能です。) 参加は無料です。また、現在くらもちレディースクリニックにおかかりでない妊婦さんでも参加は自由です。

◎無痛分娩教室開催時期

  • 時期:妊娠前半期頃 前期母親学級の終了直後
  • 指定週(事前に要確認)の土曜日午後1時半より約30分
    • 無痛分娩で出産される方が対象です。
    • 無痛分娩に興味のある方も対象です。
    • 現在他院におかかりの方も参加は自由です。

◎図:無痛分娩の開始スケジュール

◎無痛分娩を始めるきっかけとして (上図参照)

  • 計画・無痛分娩 計画分娩+無痛分娩
  • 計画・途中無痛分娩 計画分娩の途中から無痛分娩に参加する
  • 自然・無痛分娩 自然な陣痛からあらかじめ無痛分娩をスタート (最も基本です。おそらく千葉県では当院のみ 可能)
  • 自然・途中無痛分娩 自然分娩の途中から無痛分娩に参加する
    • (いずれも用語は正式名称ではありません) 等があります。(上図参照)
無痛分娩の実際
 無痛分娩をお受けになるときの、実際の仕組みを簡単に説明いたします。自然に陣痛が来てから無痛分娩を行うことを基本にしています。(8)からお読みください。ここでは計画出産+無痛分娩に基づいて説明します。「無痛分娩の開始タイミングスジュール」をあわせてご覧ください。また、状況により臨機応変な対応が必要なこともあるため、スケジュールに変更が加わることがあります。

(1) 10ヶ月の妊婦健診である程度分娩準備の状態が整ったかどうかを判断します。子宮口の開き具合、やわらかさなどの状態、その他分娩に差し支える要因の有無なども検討します。そこですべてがOKとなると、出産希望日を取り決めます。通常は月〜木曜日いずれかの日勤帯がお誕生日となるよう設定します。

(2) 計画出産日の前日午後に入院します。入院後のご説明などが一通り終わった後、計画出産の準備に入ります。

(3) 胎児心拍モニター検査を約30分程度行います。

(4) 浣腸、陰部の剃毛を行います。

(5) 子宮の出口をひらく小さな風船をそっと子宮口に入れます。ここまでは通常行う計画出産の準備とまったく同じです。部屋へ戻りご自由にお過ごしください。食事、歩行などにまったく制限はありません。このまま風船が刺激となりきちんとした陣痛が生じることもあります。その場合はその時点で無痛分娩処置を開始します。

(6) 翌早朝より胎児心拍モニター検査を行い、同時に陣痛促進剤を少量づつ使用開始とします。

(7) 硬膜外麻酔の準備をします。あらかじめ背中に局所麻酔を行った後、髪の毛ほどの太さ、柔らかさの管を背中に挿入します。この処置にほとんど痛みは伴いません。

(8) きちんとした陣痛が生じたことを確認します。(午後になっても陣痛が来ない場合は翌日再度試みます。注;計画出産の方)

(9) 硬膜外麻酔用の背中の管(カテーテルといいます)より麻酔薬を注入し、陣痛の痛みをコントロールしてゆきます。麻酔薬を注入した後ある程度時間がたてば歩行可能となります。適宜胎児心拍モニター検査を行います。リラックスしながら出産を待ちましょう。痛みの強い場合、仙骨神経ブロックなど補助的麻酔を追加します。(尾骨の近くに局所麻酔の注射をします。)

(10) 出産直前にいきみ感が足りない場合などは吸引分娩を選択します。

(11) 出産後硬膜外麻酔のカテーテルを抜き無痛分娩は終了です。

くらもちレディースクリニックの無痛分娩への取り組み
当院は麻酔科標榜を許された数少ない個人病院です。
無痛分娩の名前は他の病院、産婦人科診療所でも目にすることができます。しかし、当院の無痛分娩に対する診療体制はそれらに比べ、絶対的アドバンテージが少なくとも4点あると考えています。

(1) 個人産婦人科診療所で麻酔専門医(麻酔科標榜医師、麻酔指導医)が常に院内に常駐することは人件費等の関係でほとんどありえません。ちなみに麻酔科医師が常駐(常勤医師といいます。)していないと、○○産婦人科・麻酔科との表記が許されません。麻酔は高度な専門性が必要とされる専門的分野であり一般産婦人科医師が勝手に麻酔科医師を名乗ることはできません。個人産婦人科診療所で無痛分娩が行われる際、多くはその産婦人科医師・院長先生が麻酔を担当することになりますが、麻酔の専門性、安全性を保障するものでは決してありません。大きな総合病院ではどうでしょう。

(2) 麻酔科を有する総合病院では多くの場合麻酔専門医師が常駐します。しかし麻酔科医師の中には無痛分娩に対し理解、興味の薄い先生も大勢存在し、無痛分娩は特殊な分野となっているのが現状です。なぜか。無痛分娩は麻酔科的専門知識にあわせ、産婦人科的専門知識の双方が同時に要求され、はじめて満足する結果につながるからです。無痛分娩に対し理解、興味の薄い麻酔科医師は無痛分娩を成功させることができません。

(3) 無痛分娩に対し理解、興味の高い麻酔専門医師が常駐する総合病院と比べても当院の無痛分娩に対する優位性は揺るぎません。上に述べたように無痛分娩成功の秘訣は麻酔科的専門知識と産婦人科的専門知識の双方が有機的に結びつくことが必要条件となります。実はこの有機的連携を行うことは実に絶妙なコンビネーションが要求されます。言い換えると無痛分娩の達成は右足の産婦人科学と左足の麻酔科学を使って駆け上がる登山であると言ってもよいでしょう。「一人の麻酔科認定・専門医資格を持つ産婦人科医師が最後まで分娩経過を担当する。」、が最もよい無痛分娩の手法です。

(4) 当院では無痛分娩に多大な興味・関心を持ち、それに見合う実績(以前の勤務実績を含む)をあげています。当院院長は麻酔科医師の時代より無痛分娩に多くの関心を払ってきました。また、産婦人科医師となった後は麻酔科認定医時代の経験を生かし、同時に産婦人科専門医の経験を加味しながら積極的に無痛分娩に取り組んでいます。(平成14年第23回上総臨床検討会にその臨床成績を発表)